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【日本語教育能力検定試験】ソシュールについて【Ferdinand de Saussure】

投稿日:2019年7月3日 更新日:

こんにちは、みなさん。

今日は日本語教育能力試験の勉強で、言語学分野に必ず出て来る、

ソシュール」について書きたいと思います。

ソシュールとは19世紀後半のスイスの言語学者です。

また、ソシュール家はスイスで名の知られた名門だったようです。

なぜソシュールが言語学分野で有名なのかというと、

近代言語学の父とも呼ばれているからです。

ソシュール以前の言語学は基本的に、通時的な言語の分析研究が行われていました。

たとえば、英語の歴史や成り立ち、語源など歴史的側面の研究です。

しかしソシュールは、そのような通時的側面と、言語そのものの内的な構造にも着目する必要がある述べました。

それでは、具体的にソシュールの言語理論を見ていきましょう。

ソシュールはその言語理論の中でいくつかの概念を提示しています。

①シニフィアンとシニフィエ

②ラングとパロール

③通時的と共時的

④恣意性

⑤線条性

⑥分節性/二重分節性

以上がソシュールの主な言語学理論の概念です。

①のシニフィアンとシニフィエから解説してきます。

言語は、シーニュ(記号)の一つであると考えられ、このシーニュは2つに分けられます。

一つをシニフィアンと呼び、日本語では能記と呼ばれます。

もう一つをシニフィエと呼び、日本語では所記と呼ばれます。

シーニュ(signe)=シニフィアン(signifiant)+シニフィエ(signifie)

このように、言語(記号)は2面性を有しているとソシュールは考えました。

シニフィアンとは、カタチ=「」のことであり、「示すもの」の意味です。

シニフィエとは、イミのことであり、「示されるもの」の意味です。

たとえば、「りんご」を思い浮かべてみましょう。

「りんご」のシニフィアンは、/ringo/(日本語)とか/ ˈæpl /(英語)とか/Píngguǒ/(中国語)と表せます。

「りんご」のシニフィエは「🍎」で表せます。つまりりんごの概念です。

りんごという一般に赤くて丸くて、甘酸っぱい味がするあの食べ物、というイメージは世界共通でありますね。

この世界共通のイメージ(概念)シニフィエと言うのです。

このりんごのイメージ(概念)を頭に浮かべて、そのりんごの名前を発音してみると、

日本人なら/ringo/と呼び、英語圏の人なら/ ˈæpl /と呼び、中国人なら/ Píngguǒ /と呼びます。

つまり、りんごという概念イメージは世界共通ですが、それを言い表す音は言語によって違いますね。

このことをシニフィアンと言います。

シニフィアンは言語によって違いますが、シニフィエは言語によらず同じなのです。

これが、シニフィアンとシニフィエの関係です。

ちなみに補足として、

シーニュ(signe):記号

シニフィア(signifier):示す

シニフィアン(signfiant):示すもの-現在分詞

シニフィエ(signifie):示されるもの-過去分詞

もちろん全部フランス語ですが、ある英語の単語に似ていませんか?

そうです。「サイン(sign):記号」ですね。語源は一緒なんですね。

さらに補足です。

シニフィアンは日本語で「能記」です。「能」は出来るの意味です。つまり、「示すことが出来るもの」という意味です。

シニフィエは日本語で「所記」です。「所」は漢文で受身を表します。つまり、「示されるもの」という意味です。

いかがだったでしょうか?言葉ってなかなかおもしろいですよね。

次に②ラングとパロールについて説明したいと思います。

ラング(langue)とは、特定の共同体で用いられる言語の話者が、共通に存在を認めている言葉の全体像の事です。

たとえば、日本という共同体で用いられる日本語を日本人同士で共通して認識している文法や発音や単語などのことを言います。

パロール(parole)とは、ラングが個人によって、特定の場面で使用されたものの事です。

たとえば、日本人が日本語を使ってその人個人が発する言葉、「今日は寒いな」とか「火星に行きたい」などです。

ラング:共通、普遍、一般、抽象

パロール:個人、具体的

ラングという共通のものがあり、そこから個人的に使用されるパロールが無数に存在しているイメージです。

次に、③通時的と共時的の説明に入ります。

冒頭のソシュールの紹介のところでも少し触れましたが、

時間という次元を考慮した場合において、

通時的とは、時間の流れに沿って変化する側面のことです。

共時的とは、時間の流れを無視して、一時点(現在)の静止状態とする側面のことです。

たとえば、英語という言語を考えた場合、その英語の歴史をさかのぼってみた側面を通時的と言い、

現在の使用されている言語をみた側面のことを共時的といいます。

ソシュール以前は通時的でしたが、ソシュールは共時的側面も大切であると主張しました。

次に④恣意性について説明します。

①で説明した、シニフィアンとシニフィエを思い出してください。

シニフィアンは「音」でしたね。

シニフィエは「意味」でしたね。

ソシュールは、言葉の「音」と「意味」は必然的ではなく、恣意的なものである述べました。

たとえば、「 🍎 」の意味は、「赤くて丸くて甘酸っぱい食べ物」ですが、

「 🍎 」の音は、/hunui/とか/apine/とか/kekkyoi/などでもよかったけれど、

たまたま/ringo/になっただけで、そこには必然性はなく、偶然そうなったという意味です。

このことを「恣意性」と呼びます。

「 🍎 」のことを誰かがたまたま/ringo/と呼んだことが今に残っていて、それを現代の人が使っているだけのことです。

なので、言葉の意味と音には必然性はなく恣意的な関係であるとソシュールは述べました。

ちなみに、「恣意」という言葉、なかなか普段使わないし意味も難しいですよね?

おぼえかたとしては、「恣意」の「恣」を分解すると「次」と「心」になります。

「次」に「第」をくっつけて、「次第」と「心」で「心次第」、つまり「自分の思うまま」の意味になります。

このように覚えましょう。

つぎに⑤線条性について説明します。

線条性とは、言葉は文字でも発する音声でも、1つ1つ順番に時間の流れに沿って出て来るものであり、

たとえば、同時にその言葉の1つ1つの音声を発したり、順番を入れ替えたりしても意味は通じないとソシュールは述べました。

たとえば、「ありがとう」という言葉を考えた場合、

「あ」「り」「が」「と」「う」という5つの音を同時に出したり、

「が」「あ」「う」「り」「と」と順番を並べ替えても意味はわかりません

つまり、「あ」「り」「が」「と」「う」という音の順番で1つ1つ発音しないと意味がわからないということです。

このことを線条性と言います。

最後に⑥分節性/二重分節性について説明します。

分節性/二重分節性とは、有限の「語」を組み合わせることで、無限の「文」を作りだし、無限の意味を表わすことができることをいいます。

この概念はすこし難しいので、例文で解説していきます。

例文①「ごはんをたべる」という文の場合、

音で表すと「gohanotaberu」となります。

これを「語」で分けると「gohan」「o」「taberu」となります。これを一次分節と言います。それぞれの語は意味を持っています。

さらにこの語を細かい音に分けると、

「gohan」は「g」「o」「h」「a」「n」

「o」は「o」

「taberu」は「t」「a」「b」「e」「r」「u」

という風に分けられます。これを二次分節と言います。それぞれの音には意味はありません。

つまり、日本語を考えた場合、50音という有限の音から、数十万の語が作られ、

その数十万の語を組み合わせることで、無限の文を我々は作ることができるのです!

そう考えると、言葉ってすごいですね~!まさに人類の大発明ですね!

ちなみに、ソシュールはその生涯で彼自身一冊も本を書いていません

彼の有名な本で『一般言語学講義』(Cours de linguistique generale)は、

彼が大学で講義をしていた際に、生徒がその講義を書き留めていたノートなどから作られました。

また、この『一般言語学講義』の翻訳本第一号は、なんと日本語訳だったそうです。

それでは、また壮大なロマンを追い求めて。

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  1. […] (この考え方は以前書いた「シニフィアン」と「シニフィエ」の概念と同じですね。) […]

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